contact_support対位法ってなに?
対位法というワードは、和声法よりもさらに聞き馴染みが無いかもしれません。
実際、より古い歴史を持つエクリチュールで、ルネッサンスの時代(15世紀頃)に、今のドイツあたりで生まれました。
「和声=ハーモニー」のように置き換えられる言葉もないので、ちょっととっつきにくいのです・・
「対位法」の原語はドイツ語で、「Kontrapunkt(コントラプンクト)」といいます。英語には「Counterpoint(カウンターポイント)」と訳されていて、日本語なら「対旋律を作るための技法」ということになります。
メロディ同士の掛け合いってことかしら? だいたいそんな感じかにゃ〜
主旋律と対旋律
上の譜例はオーボエ(Oboe)とファゴット(Bassoon)のデュエットですが、どちらが主旋律かと尋ねられたら、きっとファゴットと答えるのではないでしょうか。でも、どうしてそう思ったんでしょう?オーボエの方が動きが少ないから?
それでは、これならどうですか?
オーボエに動きが生まれたので、少し印象が変わりました。
それでもやはり、ファゴットが主旋律でしょうか?
では、最後にもう一つ。
こうなると、どちらが主旋律と言われても納得できそうですよね。このように、旋律と伴奏というような関係ではなく、どれもが対等にメロディーを演奏し、それでいて和音も濁らせずに音楽を成立させるように曲を組み立てるのが、対位法のアプローチなんです。
やっぱオレだけが目立つメロディーがいいぞ! 対位法だと、そういうヤツはダメダメですも
3つの音楽構造
対位法は、ポリフォニーのために生まれたエクリチュールと言われています。その「ポリフォニー」って、いったい何なんでしょうか?
対位法について学ぶ前に、次の3つの違いは知っておく必要がありますよ! ・モノフォニー 旋律のみで無伴奏 ・ポリフォニー 旋律と伴奏の区別が無い ・ホモフォニー 旋律と伴奏が区別される
音楽はもっともシンプルな楽器「歌」を起源に、少しずつ進化してきました。
その歌の発展を通して、3つの構造についてもう少し詳しく見ていきましょう。
◯モノフォニー
歴史をたどると、一番初めは 独唱 しかありませんでした。誰かに披露するというよりも、鼻歌や自分が楽しむために一人で口ずさむような歌です。それからしばらくすると、みんなでいっしょに同じメロディーを歌いだす、 斉唱 をするようになりました。こういった、伴奏もハモりもない、ただ一つの旋律があるだけの音楽を「モノフォニー」といいます。
斉唱っていうと、誕生パーティーでケーキが出てきた時にみんなで歌う「Happy Birthday to You」みたいな感じよね
◯ポリフォニー
また少し時代が進むと、今度は 輪唱 が流行するようになりました。ずれた部分が元のラインと違えば、同時に複数の音が鳴るので、和音が生まれます。これが進化して、単に同じ旋律で追いかけるだけでなく、複数のメロディ同士がキレイに絡むよう、意図的に声部が作られるようになっていきました。このような音楽が「ポリフォニー」です。
輪唱は「カエルの歌」とか「カッコウ」とか、少しずつタイミングをずらして同じメロディーを歌うやつですも
◯ホモフォニー
それから更に時が経つと、ついに 合唱 が主流になります。明確なメロディーがあって、そこにハモり役のパートが加わったり、楽器の伴奏によって和音が付けられるスタイルです。旋律+伴奏、というこの音楽は「ホモフォニー」と呼ばれます。
J-POPとかのウタモノは、ヴォーカルが旋律で、バンドが伴奏だな! ピアノでも、右手が旋律で、左手が伴奏、って曲がたくさんあるよ~
対位法の真髄
現代の音楽はホモフォニーが主流ですが、ポリフォニーにしか表現できない特別な魅力があります。ただ、何も考えずにいくつものメロディーを同時に鳴らすと、ぶつかって濁ったり、ゴチャゴチャしてしまうので、ポリフォニーは作るのがとてもむずかしいんです。美しく響かせるためには、きちんとハモるような設計をして、動きがかぶらないように交通整理をして、旋律同士がベストに絡み合うよう調整する技術が必要になります。対位法は、それを叶えるためのエクリチュールなんです。
厳格対位法
対位法には、ページ冒頭の譜例のような自由な対位法から、転回や模倣を含む複雑な対位法まで、いくつかの段階があります。最終的には上手に音を動かせさえすれば良いのですが、初めのうちはガイドがないとうまくいきません。厳格対位法は、その助けになってくれるものです。まずは2声の課題からスタートして、3声、4声と増やしていき、それぞれの声部数で色々な類形の課題を実施していきます。
第一類 1:1(全音符)
第二類 1:2(二分音符)
第三類 1:4(四分音符)
第四類 移勢(弱拍と強拍がタイで結ばれたシンコペーション)
第五類 華麗(第一類~第四類までの組み合わせ+α)
5声からは第一類「全音符」と第五類「華麗」だけになり、最終的に8声にまで増えていきます。まずは4声までで十分なので、少しずつやってみましょう!
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対位法のレッスン フランスにあるパリ音楽院の対位法クラスで使われている教科書を軸に、よりわかりやすく噛み砕いた独自の教材を使っています。