Écriture|エクリチュール

contact_supportエクリチュールってなに?

筆記や書法といった意味のフランス語に、エクリチュールという言葉があります。音楽の世界では「曲作りに必要な知識のパッケージ」のことを指し、日本語で言う音楽理論に近いイメージです。エクリチュールを学ぶと、コードやハーモニーから楽曲を自由自在に組み立てることができ、様々なジャンルや楽器編成の作編曲ができるようになります。

 クラシック音楽だけでなく、ジャズやポップスなど、様々な音楽ジャンルで役立つ場面がたくさんあります。


エクリチュールにはいくつかの種類があり、初心者でも経験者でも、それぞれのレベルに合わせた知識を身につけて、曲作りや演奏に生かすことができます。

looks_one 記譜法  looks_two 和声法  looks_3 対位法 
looks_4 管弦楽法  looks_5 楽式論

作曲教室で扱っているこの5つは、交響曲を作るために必要なエクリチュールと言われています。それくらい多くの知識が詰まっているわけですが、もちろん、すべてを学ぶ必要はありません。自分のやりたいことや、興味のある音楽に必要なポイントだけを、いいとこ取りすることもできるんです。

曲なんて作ったこともなければ楽譜を読むのも自信がない、そんな人でも曲作りをスタートできるように手助けしてくれるのがエクリチュールの頼もしいところ。すでに音楽の知識や経験がある方も、できるようになりたいことに沿ったものだけを選べます。

sentiment_very_dissatisfied 全部勉強するのは大変そう・・・ tag_faces 一部だけでも役立つし面白い!

 

それでは、これら5つがそれぞれどんなものなのかを、簡単にご紹介しましょう。

1⃣記譜法

作編曲の初心者にまずおすすめしたいのは、楽譜の読み書きについてまとめた「記譜法」です。楽譜の読み方くらい知ってるよ!という方も、もしかすると知っているのは記譜法のほんの一部だけかもしれません。

世の中には楽譜が無くても成立する音楽がある一方で、楽譜は必要不可欠というジャンルや編成もあります。PCで作られた曲をストリーミングで聴くのが当たり前の時代になったのに、今でも楽譜を使い続けている人はたくさんいますよね。

紙からタブレットなどに変わることはあっても、楽譜そのものが廃れないのには、それ相応の理由があるからです。楽譜の読み書きのルーツである記譜法は、音楽を楽しむすべての人にとって役立つ入門エクリチュールなんです。

looks_one 記譜法についてはこちら

 実は奥が深い記譜法、楽譜が読める人にも新たな発見があるかもしれません!

2⃣和声法 と 3⃣対位法

「和声法」と「対位法」はどちらも、複数の声部(パート)を組み合わせてひとつの音楽としてまとめる方法、それをとことん考えたエクリチュールです。具体的には合唱や吹奏楽のアンサンブル、J-POPのストリングスセクションなど、単音しか出せない歌や楽器が集まって一緒に和音を作るような場面で大活躍します。とくに和声法は学ぶことで曲の理解度がグッと深まり、全体の中での自分の役割がわかるようになるので、曲作りはしないけど演奏ならするという人にもぜひ知って頂きたいエクリチュールです。

ちなみにこの2つは名前こそ違いますが「縦から見るか?横から見るか?」という視点の差があるだけで、目指しているものは同じなんです。生まれた時が違うためアプローチにも違いがあるのですが、はじめてこれらのエクリチュールを知ったという方は、大雑把に ”似たもの同士” と捉えておいて問題ありません。詳細な違いは学ぶ中で少しずつ見えてきますし、突き詰めれば最終的に一つのところへ辿り着くということがわかってきます。記譜法がある程度整理できたら、次は和声法にチャレンジしてみましょう!

looks_two 和声法についてはこちら looks_3 対位法についてはこちら

 和声法と対位法には、共通する知識がたくさんあるんです。

4⃣管弦楽法

ズバリその名の通り、オーケストラを組み立てるために必要なエクリチュールが「管弦楽法」です。オーケストラには弦楽器、木管楽器、金管楽器、打楽器の4セクションがあり、弦楽器の”○型” や 木管楽器の”○管” (○には数が入ります)といった定型によって、その編成や規模を表現します。ある程度決められた枠組みの中で、個性豊かな楽器たちの魅力を引き出すためには、各楽器同士の組み合わせだけでなく、楽器そのものの構造や奏法についての知識も必要になります。そこで、まずは楽器のこと知り(楽器学)、それから管弦楽のための編曲法(オーケストレーション)を学びます。自分で管楽器や弦楽器を演奏できる人は、演奏の感覚や音の響きをリアルに想像できるので、きっとすぐにコツがつかめるはずです!

looks_4 管弦楽法についてはこちら

 今はPCでスコアの音を確認できるので、紙の楽譜の頃よりずっとやりやすくなりました。

5⃣楽式論

曲にはテーマ(主題)と呼ばれるメロディがあります。「運命」なら冒頭のジャジャジャジャーン!J-POPなら大抵はサビ頭のフレーズ、といった具合に、多くの場合テーマは曲中に何回か登場します。たとえばクラシック音楽にはソナタ形式と呼ばれる楽式があり、テーマが繰り返し登場する構成になっています。同じように、J-POPなら頭サビ→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏、そして2番が始まりまたサビへ進むというような王道パターンがありますよね。楽式というのはこういった楽曲構成の分類のことで、これらを活用して曲の印象をコントロールしようというのが楽式論です。

looks_5 楽式論についてはこちら

 少し取り入れるだけで、ありきたりな曲からガラっと雰囲気の違った曲に!

デジタル時代のエクリチュール

コンピュータを駆使した音楽制作が主流となった2000年以降、伝統的なエクリチュールだけでは、作編曲を完結させるのが難しくなってきました。もう楽譜を手書きすることはありませんし、音楽制作のほとんどの工程がデータで進められ、納品も、聴き手に届く音さえもオンラインという時代です。制作~消費、最初から最後までがデジタルという今、音そのものである「音波」、それをデータとして扱う際に重要となる「音量」、これらを総合し楽曲として組み立てるための「音響」についても、これからのエクリチュールの範疇だと考えられます。

 音楽は音楽だけで楽しまれるよりも、ゲームやアニメ、ドラマ、映画、動画などと切り離せない関係になりつつあることから、「映像」もエクリチュールに組み入れたレッスンを行っています。

※映像に合わせて音を作ることを「フィルムスコアリング」といいます。