2-1 和声法の基本ルール

和声法には様々な制約があります。例えば、特定の2パートが連続して完全5度音程を鳴らしてはいけなかったり、増進行をしてはいけなかったり、上行あるいは下行しかできない音があったり、このようなルールを「禁則」と呼び、音の動かし方を制限しています。

それぞれの禁則には作られた理由があるのですが、実際の楽曲では禁則を破ることもたくさんあります。和声における禁則は、例えるなら少年マンガの修行で手足に付ける「重り」のようなものです。決められた条件下で音を動かす練習をすることで、枷が外れた本当の作曲では自由自在に音を操ることができるようになる、というわけです。ここでは、手軽に和声のエッセンスを取り入れられるテクニックをご紹介したいと思います。

音域に関するルール

各声部の範囲内で

各声部は次の音域を守ろう。楽器でも音域の制限はあるので、範囲内で音を動かすことに慣れよう。

各声部の音域

交叉させない

Soprano が Alto より低くなったり、Tenor が Alto より高くなったりするのは避けよう。

距離感を適切に

テナー⇔ベース間を除いて、隣り合った声部同士の音程はオクターブを超えないようにしよう。上3声(Bass以外)の構成音が密集しているか、開離しているかによって、Open か Closed かが決まる。Openで始めたらOpen、Closedで始めたらClosedを続けないとダメ。

川の流れのようにスムーズに

和声法には「できるだけ近いところに移動させる」という基本的な考え方があります。例えばチャーモの編曲では、2小節目に3rdが「ド」を、3小節目には2ndがオクターブ上の「ド」が吹くように書かれていますが、特別な意図がない限り共通音は保留(オクターブ変えたりもせず同じパートに担当)させるのが「できるだけ近いところに移動させる」ことになります。無駄な動きを避け、特定のパートが突出することなく、流れる小川のようにさらさらと、スムーズに進んでいくように音を配置していくのが和声的なアプローチというわけです。

なお、メロディとベースは例外ですので、補足しておきたいと思います。編曲の場合はメロディが決まっているので、音の移動先に選択の余地はほとんどありません。ベースには根音を演奏させることが多いので、必然的に4度や5度の跳躍が多くなります。これはベースの許容されることで、特別扱い。なお、ここでのベースは “最低音部” という意味です。彼らのケースではバリトンサックスでしたが、オーケストラならコントラバスやチューバ、バンドならエレキベースなど、音楽ジャンルや編成によってベースを担当する楽器も変わることになります。